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関根“デッカオ”浩司の瀬戸内移住顛末記

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瀬戸内は香川に越してきて、半年あまりが経過した。関西圏を出るのは初めてのことだから、周囲には「海外留学」「瀬戸の花嫁を探しに」などと吹聴し、意気揚々と海を渡ったわけだが、いいこともあれば、そうではないこともあった。今回、「地方移住」というものにぼんやりしたあこがれを抱いている人に、その実情を少しでも知ってもらいたく、一問一答形式で筆を取りたく思う。判断を迷っている諸兄諸姉にとって、少しでも参考になれば幸甚である。

 

Q. 住み心地はいかが?

A. たぶん、文句を言うのがおかしい。

高松市内の繁華なエリアを少し離れた住宅街に住んでいるが、幹線道路から引っ込んだロケーションもあってか、やかましいこともないしゆったりしていると思う。ただ、電車や飛行機の音、酔っ払いの妄言などが聞こえてこないのはわりに寂しいもので、いくばくかの物足りなさを感じるのは事実だ。ひと通りのナショナルチェーンは揃っているので買い物には困らないが、一方で商店街に出かけてもナショナルチェーンとうどん屋が跋扈している状況なので、これまた寂しい。豆腐は豆腐屋で買いたいわけだけれど、その望みはかなわない。ぜいたくを言っているのは分かる。でも、個人店が生き残れない環境というのは、実際のところ悲しいものである。

 

Q. 交通の便は?

A. 車社会共通のそれはあると思う。

公共交通機関をあてにできないのは、実家のある和歌山も同じだ。そう考えると、地元に骨を埋めるのも難しいのかもしれない。車を持つ気はさらさらないが、おでかけスポットが集積していないことを思うと、この判断は誤っていると言わざるをえない。また、市内の道路はまるでパッチワークのような舗装がなされており、土地が平坦といっても自転車に乗っていれば終始ガタガタと振動にさいなまれることになる。本来、10年はもつ自転車が、2年でお釈迦になるような気がする。どうにかなりませんかね、この道路行政。

 

Q. 楽しいナイトライフは送れている?

A. わりと楽しいよ。

なじみの店ができれば楽しくなってくると思う。街が狭いのも手伝ってか、そのへんのネットワークづくりにはさほど窮することはなかったですね。幸いにしてあるバーで個展めいたものを開くこともできる程度には、打ち解けている。転居半年やそこらでこの状況であれば、御の字どころの騒ぎではなかろう。ただ、いかんせん立ち飲み屋が少ない。大都市に比べて人口が少なく、なおかつ車で帰らなければならない人の割合も高いがゆえに、生中のレートが500円というのも消費者としてはつらい。いや、そうでなければ商売が立ち行かないのは分かるんですけどね。でも、店の絶対数が少ないぶん、おしゃれなバーに出入りできるようになったのは、でかいと思う。いずれ帰阪するだろうけど、すえた店ばかりを好んでいたあのころの自分とは、また違った状態で大阪に戻れると思う。

 

Q. 日々の憩いは?

A. 暮らしに川が必要だ。

海は近いが、思いのほか行くことはない。なんとなくだけれど、体が川を欲しているのだと思う。大阪にせよ、東京にせよ、街なかに川が流れているのが好ましい。結局のところ、人は水のあるところに集まるわけであって、買い物をするにも、お茶をするにも、大小問わず川にぶち当たることが多い環境が、なんとなく憩いになっていたのだと思う。以前、帰阪した際に飲みすぎてしまい、懇意にしている古着屋のお兄ちゃんを連れ出して夜中、堂島川のほとりでお茶をしたことがある。あれは文化だと思いましたね。いずれにしても、この日常が必要だと思った次第である。

 

Q. 瀬戸の花嫁は見つかった?

A. 見つかっていません。

環境を変えれば、ここ数年来の潮目も変わる。そんなことを思っていたけれど、現実はそう甘くない。

 

Q. 移住に必要なものは?

A. ずばり大志。

僕の場合、土地への確たるあこがれがあったわけではなく、単に仕事がそこにあったから移住したに過ぎない。ここまでつらつら書いてきて、結果的に文句の方が多くなっているのが心苦しいが、やはり縁もゆかりもない土地で暮らすには、県の広報紙の裏表紙を飾るくらいの気概、大志が必要だ。第一次産業に従事する、カフェを開く、コミュニティ拠点を運営する、そういう気持ちがあれば、また違った景色が広がるのだろうけれど、残念ながら現状の自分は組織に巻かれないことには、自己管理もおぼつかない。あるいは、イオン的な文化に巻かれてしまうことだろうか。うだうだ考えることなく、ナショナルチェーンの恩恵にあずかることができれば、見知らぬ土地でもうまいことやっていける。それは、こちらに暮らす人を見てもよくよく分かることである。

 

いまさらではあるが、これはあくまでも現時点での関根個人の感想である。ということを表明して、無理やりにこの項を閉じたい。総合的な評価については、もうしばらく時間を置きたく思う。

 

(関根“デッカオ”浩司)